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執筆者の写真大成 裕道

平和を語り継ぐ

更新日:2023年9月9日

今日は、78回目の終戦記念日です。


もはやこの日に気づかない人もいるほど戦争が他人事になってきた今、この「無関心さ」は平和か退廃か、そのどちらだろうと毎年考えます。

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先日、日本テレビの特集でとても印象的な特集がありました。

広島の高校生が「戦争を絵で語り継がないといけない」と考え、戦争の凄惨さについて年配の戦争経験者から学び、”その日”を絵で語り継ごうとする話です。


広島に生きる者として、戦争の惨さを語り継がないといけない。でも、知れば知るほど信じられない。想像できない。そんな葛藤を抱えながら、彼はとても辛そうな面持ちで美術部の仲間たちとキャンバスに対峙します。表現して伝えなきゃいけない。そう心から思っているにも関わらず、「わからないから描けない」。そんな状態に憤り、半狂乱になってもがく姿に、私は強く胸を打たれました。


「自分には関係がないから」と無関心になる人が多くなった今、使命感と責任感を抱え、不安定になりながらもキャンバスに向かう16歳の絵描き。

私は彼のことを、素晴らしい人だと感じました。


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過去に『金融×平和プログラム』の取材で沖縄を訪れ、現地の女性にインタビューをしたときのこと。取材に訪れた私たちは、彼女の話から、沖縄の”ふつうの人”の平和意識の高さにひどく驚きました。


「私たちは、小学校1年生のころから、地獄のような映像を嫌というほど見ているんです」

本土決戦の当事者である沖縄の平和教育は特別である。インタビューの冒頭で、彼女はこう言いました。火炎放射器で焼かれる人、断崖から飛び降りる姿、身体の一部を失い痛みに狂乱する兵士。いったい、誰がそんな映像を観たいと思うのか。小学生の身にはあまりにも凄惨な映像が脳裏に焼きつき、その恐怖に夜も泣いてしまったと彼女は話しました。


「戦争の話はもう嫌だ」小学生だった彼女はある日、祖母にそう漏らしました。

「それでも、忘れたらいけない」と、祖母は彼女に自らの戦争体験を聞かせました。さっきまで笑顔だった祖母の顔が強張り、苦しそうに涙を流しながら、時間をかけて自らの経験を幼い彼女に語りました。


語られた戦争の記憶は、その後の彼女に大きな影響を与えました。島民の4人に1人が犠牲となった沖縄の決戦。自分の先祖が何度も何度も”運命の分かれ道”を潜り抜け、今の自分の命の襷を繋げてくれた。その事実を、本能が理解した瞬間だったと言います。

「そう考えると、これほどにありがたいことなんて、ないんです」

28歳(取材当時)の彼女は、私たちにそう語りました。


沖縄では、結婚して子どもにも恵まれた地元の仲間と集うとき、『この子たちに、あの戦争をどう語り継いでいくか?』という話題が自然にあがるといいます。それは、沖縄県民なら誰もが一度は経験するという幼少期に家族に語られる生の「戦争の記憶」からくるものだろうと彼女は語ります。しかしあまりに重く耐えられないような雰囲気のなか、多くの子どもがそうするように、幼き頃の彼女も例外なく、こんな質問をしたことがありました。


「おばあ、どうしてつらい話を聞かなきゃいけないの?」


彼女の率直な問いに、祖母は答えました。


「忘れたら、また同じことをするでしょう」


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戦争を考えるとき、私はいつも自分が存在する有り難みを想わずにはいられません。先祖が誰か一人欠けても、私の存在はありえない。戦争の話は、日常生活で見失いかけているこの上なく尊い事実を、眼前に突きつけるからです。

自分はいま、先祖たちの人生の営みの上に立っている。

知覧の特攻平和会館には「俺が死ねば、きみが1日長く生きられる」と記された絶筆がありました。もし、そんな気持ちで自分たちの生きる時代の「平和」を切望した先祖がいたと知ったら、自分勝手に退廃的に生きるなんて、できるはずがないのです。



過去の凄惨な出来事を直視し、“誰かのため”に耐え難きを耐えた人々の気持ちを想像すること。そんな地獄が二度と訪れないように、思い出したくもないことを涙を流しながら語ってくれる人々に感謝すること。いま、自分の生き方は彼らに恥じないか顧みること。これからも続く社会のために、何をすべきか考え行動すること。そして、小さな争いをなくすために、相手を思いやること。


人間という愚かな器である以上、そうしたことを忘れてしまえば、私たちはまた同じ地獄を経験するでしょう。だからこそ、せめて年に1度くらい、平和について黙考したいものです。



「78回目」の終戦記念日。


この数字が絶えることなく増え続け、感謝と思いやりに満ちた社会が続くよう、”人に良い影響”を与える生き方をしようと、襟を正す1日となりました。

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